「第六の味覚の可能性」 ◆ 菊水 高橋正人 ◆
先日、ネットのニュースで「第六の味覚」と言うのを見ました。
米フィラデルフィアで開催された米国化学学会において、
カルシウムの味を感じる受容体が、マウスの舌に存在するという
報告がされたと言うことです。
さらにその報告では、ヒトとマウスには共通する
遺伝子情報が数多く存在するため、ヒトにも「カルシウム味」を感じる
受容体がある可能性が示唆されています。
1907年に池田菊苗博士が第五の味覚”うま味”を発見して以来の
新味覚の発見となりうるわけですが、果たしてカルシウムの味が
第六の味覚としてどう言う意味を持つのかは未知数です。
カルシウムの味と言うのは分かりにくいところですが、
カルシウム分の多い水は確かに美味しく感じられません。
5つある味覚の中ではある意味、苦味と同じく、
”美味しくない”ほうに分類出来るものだと思います。
でも、苦味をうまく使うことによって、料理を引き立たせることは出来ます。
もしかしたら、カルシウム味というものも、工夫次第で
料理に生かされて行くかも知れません。
今日、料理を取り巻く世界でもどんどん科学のメスが入ってきました。
それは栄養学や生化学、広く考えれば心理学までもが含まれていると言えます。
そのことをある人は
「なんでも科学で解明してしまったら面白くなくなる」と嘆くでしょうし、
別のある人は「さらに料理の新しい可能性につながる」と目を輝かせるかもしれません。
古来より、料理と言うのはその土地でとれるものを工夫して、
美味しく食べる努力を積み重ねることで発展してきました。
毒のあるものを毒を処理して食べる技術や
加熱方法の研究によって生まれた料理も有りました。
科学的な裏付けは無くとも、経験や研究によって新しい料理が生み出されたことは
間違いのないことで、これを否定することは人類の歴史の否定とも言えます。
そして、それに対してやっと科学が追い付いてきた。
これからは科学を追いかけて料理が生み出されて行く、
それも一つの歴史なのだと思います。
長々と述べましたがいずれにせよ、そのカギを握るのは我々料理人だと思います。
その評価は何十年も先のことかもしれませんが、
先人たちが様々な料理・調理法を編み出してきたように、
我々も挑戦する気持ちだけは忘れないでいたいと思います。
投稿者 academy : 11:29
富良野の自然塾 ◆梁山泊 橋本憲一 ◆
富良野に自然塾というのがある。倉本聰さんが始められた。
ゴルフコースを50年、100年かけて森に戻す計画が中心になっている。
その土地に芽生えた実生の木々を育て、コースに戻して行く。地球にもとの森としてお返しする。
倉本さんはその森を見ることはない。しかし、次来る世代に森を伝えたいと考えておられる。
倉本さんは森が命の根源だと考えている。
それは、木々の葉っぱたちがその担い手だ、という。
動物に不可欠の酸素は葉っぱの光合成によって供給されている。
それに、雨粒が無数の葉っぱの間を転げて大地に落ちていく。
ゆっくり大地が雨水を飲み込める時間を葉っぱは調整している。
赤子にビールの一気飲みのようにミルクを与えると、本来命をつなぐものが、命を落とすものになる。
それと同じだ。
短時間に大雨が降ると、雨水は大地に染み込む間もなく、地表を滑り鉄砲水として猛威をふるう。
木々の葉っぱは命の源である酸素と水を受け取りやすい丁度の形で供給してくれている、という。
そして、「森は海の母」である、と言われている。
森に代表される植物たちは人間が吐き出す有害物質までも浄化してくれるという。
河川のアシは界面活性剤を分解して、海に戻している。
海のプランクトンが育つ酸素と、川魚が出す滋養まで届けている。
これがコンクリートで固められた堤だと、川底に土砂がなくなりアシや川草が育てない。
そう雨が降れば激流で、あとは渇水状態になる。川草や川魚が生きる環境がなくなるわけだ。
悪いことに、コンクリートの為に河川に流れる込む生活排水は海に直結する。
毎日吐き出される排水は海の自浄能力を超え、無酸素海域が生まれ、
その面積は増加の一途を辿ることになる。近海の魚介類は棲めなくなる。
陸も海も住める環境がなくなってくる。
話を自然塾に戻そう。
460メートルの元ゴルフコースを使い、歩きながら地球の誕生から現代に至る
歴史を学ぶというのがある。
地球の歴史は46億年。10メートルの間に1億年の歴史が詰まっていることになる。
人間が現れたのはゴール手前ほんの1センチほど。
なんと本当に新参者が、勝手気ままに暴れまくっている。
地球に申し訳なくなる。
そいう説得力がこのコースにはある。ゴール10メートルほど手前には、バンカーがある。
倉本さんが教えて下さった。
「あのバンカーさぁ、恐竜の足跡に見えないかい?」
「そういわれれば…」
「でさぁ、反対側に木立が並んでだろう。ほら、あそこだけ、先チョがなくなってるだろ?
この大きさの足跡の恐竜があの先チョを食ったんだよ。足跡と先チョをつなぐと恐竜が
食ってる姿がうかぶだろう」
機械や電気を駆使した人工的なテーマパークでなく、個人の想像力を駆使して
地球を感じるように考えられていた。
他に、アイマスクをして闇を作り、石畳や草の上を歩きながら、
五感を呼び戻すコースなど、素晴らしかった。
食は健康な自然なくしてはどうしようもない。
これからの料理人は地球環境に誰よりも敏感に感じる必要があるようにおもえた。
倉本さんのように、環境問題を仕事の一つと考えることが大切に思えてきた。
余談だが、10月9日からフジテレビ系列で夜10時から、
倉本聰さん脚本の「風のガーデン」とうドラマが始まります。
「人は最後に何を求め、何処に帰って行きたくなるのだろう。
風は生命を運び、風は生命を散らす」と書いておられます。
投稿者 academy : 13:53