「不二山」 ◆ 杢兵衛 寺田慎太郎 ◆
先月、長野県諏訪湖のほとりにある「サンリツ服部美術館」に行って来ました。
以前より行きたいと思っていました美術館でして、けれど目的は何より本阿弥光悦作白楽茶碗、
通称「不二山」です。ただこの茶碗を見る為だけにこの美術館に訪れたようなものです。
「不二山」は展示室の真中に置かれており、側面はあらゆる角度から見ることが
出来るようになっていましたが、残念ながら高台は見ることが出来ませんでした。
胴はやや開き加減で真っ直ぐに立ち上がり、口辺から微妙に内側に入り込むように
丸みを帯びています。手で丁寧に形成されているという印象を受けました。
胴の丁度真中当たりで色が変化し、他の茶碗では全く見られない景色を呈しています。
高台の高さも絶妙で全体的なバランスこそが実に美しく感じられる所以だと感じました。
今回私にとって大変驚きだったのは、この茶碗には「共箱」が存在するということです。
つまり光悦自身が箱書きをした箱が残っているということです。
今でこそ「共箱」というのは当たり前ですが、四百年もの昔の茶碗が箱と共に
残っているということに非常に感銘を受けました。
私は三年前にあるお茶会で、杉本貞光先生作の「不二山」写しの茶碗で
お茶を頂いたときにそのお茶碗の素晴らしさに感動しました。
話しによると杉本先生は本歌の前に立ち尽くして何時間も「不二山」を観察されたそうです。
そして杉本先生によって生み出された「不二山写し」はその景色はもちろんながら、
造形もまたまさしく「不二山」そのもの。そして茶碗としての機能性にも優れているとくれば
当然の事ながら次の瞬間には、本歌を見たいという欲求に駆られるわけです。
そして今回漸く念願が叶ったわけです。
良い気持ちになって美術館を後にしましたが、よくよく考えてみると他の展示品を
全然見ていないことに気付き、もったいない気持ちにもなりました。
投稿者 academy : 2008年09月19日 13:03