親子昆布たんけん隊@利尻・礼文見聞記◆関西福祉科学大学 的場輝佳 ◆
「親子昆布たんけん隊」(主催:味の素(株)、読売新聞東京本社、協力:NPO日本料理アカデミー、
香深漁業組合、後援:利尻町・利尻富士町・礼文町の各教育委員会)が、
平成20年7月31日から8月3日まで、北海道、利尻・礼文島で開催された。
このプログラムの目的は、昆布から“うま味”物質が発見されて100年目の記念の年に、
昆布の生産地と首都圏の親子が現地で交流して、昆布やだしのうま味について見識を高め、
日本料理のプロの料理人が子供たちに料理指導して、日本料理やだしの魅力に対する
理解を促すことである。
首都圏から小学生(4年~6年生)の親子20組(40名)が参加し、
3日目現地で礼文町の小学生(4~6年生)と合流した。
日本料理アカデミーからは、団長・竹中徹男(清和荘)、野永喜三夫(日本橋ゆかり)、
吉田忠康(八百忠別館)、児玉幸司(東京調理師専門学校)、辰馬雅子(京料理せんしょう)が
日本料理のプロとして、私(的場:関西福祉科学大学)はアドバイザー(昆布博士)として参加した。
アカデミーのメンバーは、「親子昆布たんけん隊」の全ての行程を子供たちと共にした。
以下に見聞録を記してみたい。
まず、スケジュールの概要を示しておく。
なお、昨年、第1回目として今回と同様のプログラムが実施され、
アカデミーから村田吉弘理事長はじめ多数のメンバーが参加した。
1日目(7月31日)
羽田空港(空路)→稚内空港、宗谷岬→宗谷岬ウィンドファーム→大沼バードハウス(漁師で白鳥の会・会長吉田氏から“白鳥の飛来”のお話を聞く)→稚内泊
2日目(8月1日)
稚内港(フェリー)→利尻・鷲泊港→姫沼見学→利尻町ウニ種苗センター(宮田主任、宮本所長のレクチャーで、ウニの種苗育成およびウニと昆布との共棲について学ぶ)→沓形港(グラスボートから天然昆布の生態観察を行う)→利尻町立博物館(西谷課長から利尻昆布の歴史と生態のお話を聞く)→利尻泊
3日目(8月2日)
利尻・鷲泊港(フェリー)→礼文・香深港→香深漁港(昆布と収穫、乾燥、商品化作業を見学)→礼文町町民活動総合センター(礼文町の小学生と父兄が合流して「だし・うま味サミット」を行う)→礼文泊
4日目(8月3日)
礼文・香深港(フェリー)→稚内港→稚内空港(空路)→羽田空港
上記のスケジュールは、味の素(株)が企画し、伊従部長が中心になって参加者をエスコートした。
利尻と礼文の自然のなかで、昆布に触れて、昆布とうま味を理解することができた
画期的な食育プログラムであった。
羽田でオリエンテーションを行った出発当初、子供たちは恥ずかしげで、
自己紹介の声も小さくおとなしかった。
1日目、2日目とスケジュールが進行するのに伴って、子供たちの間で交流も深まり、
連日新しい発見の連続で、子供たちは生き生きと活発になっていった。
また、読売新聞・春日さんの指導の下に子供たちを記者に仕立てて、
記事を書く宿題を課したことも、子供たちの好奇心を高める効果があったように思えた。
今回のプログラムの中核は、3日目の午後から礼文町町民活動総合センターで開催された、
礼文町と首都圏の小学生との合同による「だし・うま味サミット」であった。
第1部で、現地の花ガイドクラブの清成さんが司会をして、子供たちの交流をはかるゲームなどを行った。
第2部では、外内さん(味の素(株))がだし・うま味博士に扮して味覚教室を行い、
日本人が発見しただしの味について講義した。
第3部では、日本料理アカデミーの料理人が指導して料理教室を行った。
サミットが終わったあと、子供たちに認定書を授与した。
そこには「あなたは、だし・うま味子供サミットに参加して、明るく、楽しく、元気よく、
だし・うま味のすばらしさを学び、よく理解しました。
よって、“だし・うま味子供博士”としてここに認定します」と記されてあった。
サミットのハイライトは、子供たちの料理教室であった。
日本料理を特徴づける“だし”をベースにした料理教室。
メニューは“豚バラ肉とレタスと椎茸しいたけのさっと煮“、”茄子のそぼろ煮“、
”帆立と昆布と新生姜の炊き込みご飯“の3点。
炊き込みご飯は時間の関係で、料理教室と併行して別途炊飯にした。
料理教室のコンセプトは、
①京の料理人も極上と認める“礼文島香深産昆布”で“だし”を引く。
②礼文島と都会の子供たちが協力して料理する。
③プロの料理人が香深に出向いて指導を行う。
この3原則の下に行った本物ずくめの誠に贅沢な最極上の夏休み料理教室であった。
日本料理アカデミーが誇る5人の料理人は、子供たちと一体になって、だしのひき方、
包丁さばき、火加減、味付け・味見のポイントなど、文字通り手取足とり
懇切丁寧に見事で個性的な指南を行った。
時間が経つにつれて、子供たちの眼差しも真剣になり手の動きも良くなるのが見て取れた。
周りで子供たちの包丁裁きを見つめるお母さんたちも、引き込まれて参加されたそうに見受けられた。
子供たちもお母さんたちも出来上がった料理を試食。
“だし”のおいしさを楽しんだ。片付けが終わって、料理人先生に、
大きな声で“ありがとうございました”と言った子供たちの満足した笑顔が印象的であった。
将来、礼文の子供たちが京都を訪ね来て、礼文の昆布でだしを引いた京料理を味わって欲しい。
また、都会の子供たちが若者になった夏休みに、香深の浜で昆布干しの手伝いをしながら、
再び礼文の自然と人情に触れてくれればとも願った。
これらが実現したとき「だし・うま味子供サミット」が完結すると思った。
昆布のふる里、利尻・礼文島で実施した「親子昆布たんけん隊」プロログラムは、
大変感動的で心に深く残る3泊4日の誠にユニークな食育プログラムであった。
最後の日に、香深漁協の人たちをはじめ礼文の人たちと5色のテープで別れを惜しんで、
フェリーで香深港を離れた。子供たちは懸命に礼文の人たちに手を振った。
船中、期せずして料理人とお母さんたちとの料理教室が始まった。
子供たちと料理人とのゲームも始まった。
料理人たちのもてなしの心が、子供たちに忘れられない夏休みをプレゼントした。
香深港から利尻富士の眺望 礼文島の風景
昆布の見学 子供料理教室
味見をする子供たち 親子で試食
作った料理 アカデミーの料理人
投稿者 academy : 11:52
エゾバフンウニ ◆東京調理師専門学校 児玉幸司 ◆
今回、『親子昆布たんけん隊』に参加させて頂いた時に訪れた、ウニ種苗生産センターにおける、エゾバフンウニの生産工程を見学してきました。そこで、生まれてから漁獲されるまでの簡単な工程を伝えられればと思います。
まず、7月下旬から【受精・幼生飼育】が始まります。エサは毎日プランクトンを与えます。
8月下旬からは、【波板飼育】透明な波板に緑藻の種を付け日光で光合成させた物で、約半年間すごします。そこで、7~10ミリになったウニだけを【かご飼育】に移ります。
そのかごの中でのエサがなんと、うま味のたっぷり入った<利尻こんぶ>です。
ビックリです。
投稿者 academy : 10:59
夏の宴 ◆ 嵐山熊彦 栗栖 基 ◆
ある日、久しぶりに知人のO氏より夏の宴と題したメールが届いた。
早速メール内容に目を通してみると、先頃、O氏ご夫妻はイタリア、フランス旅行を楽しんでこられ、
そのときに買ってこられたワインをあけるので、一緒に如何ですかと言うお誘いのご案内であった。
メールを読み終わるや否や、すぐにお互いの日程調整に入り開催日時が決定した。
今まで、こと飲食にかけては人一倍凝り性のO氏に、私は幾度となく極上のおもてなしを受けている。
或る時は客人を招き、ご自慢の畑に自家製の椅子・テーブルを持ち出し
目の前に植えてある野菜を手早く調理され、
或る時は焚き火をしながら厳選された食材をスモークし、
筍の季節は朝掘りの筍を丸のまま蒸し焼きにして食べさせる、
彼はこころの底から食の楽しみ方を熟知しているスローライフの達人でして、
日頃より料理人である私の五感に刺激を与えてくれる人物である。
そして今回のメールでは何やら格別のお楽しみとして、
お茶に関する道具を仕入れたので皆で楽しみましょう!との一文があり、
私自身ひそかに当日を心待ちにしていた次第である。
その日は夕立の気配も無く、日が西に傾きかけた頃、招かれた人がいつもの畑に顔を見せ始め
ご亭主の見繕われた美酒と酒肴が自然に振舞われ、先頃のご夫妻の旅行談義に花が咲いた。
前場では旅先でご亭主自ら足を運んで仕入れてこられたシャンパンで乾杯、
オードブルは畑の周りに植えられている果樹から黄桃と梨を生ハムと共に、
続いて事前にスモークしておいたソーセージとチーズがタイミングよく
ビールを飲み始めたころに持ち出された。
その後、場所をご亭主の本宅に移し本日のメインイベントとなる数種類のワインと
奥様お手製の酒肴でおもてなしを受けた。
愚生としても、今回の供応の演出に何かお手伝いできないものかと思案し、
いくつかの食材を準備し当日の食卓を賑すよう試みた。
内容はざっと鱧・鮑・鯵などでそれに加え先日、家族旅行で訪れた小豆島で仕入れた
ヤマロク醤油の再仕込み醤油を持参し手前勝手な演出であるが、
鱧寿司、鯵の昆布締め、鮑の残酷焼きなどをご賞味していただき、
それなりに皆さん喜んでいたようで、何とか料理人としての面目を保てた次第である。
そうして夜は更け行き、ふと気づくと私の傍らに石臼が置かれており、
ご亭主にその旨を伺うと「コレは茶臼なる物で、ようやく念願がかない小生の手元に届いたものです。
今からお茶を挽いて皆で頂きましょう!」と早速、この日のために用意されていた葉茶を
持ち出してこられた瞬間、私にもやっと先日のメールの意味が理解でき、
先ほどまでワインを楽しんでおられた客人達も、この茶臼に魅せられたかのように回りを取り囲み、
今かいまかと抹茶が挽けるのを心待ちにして、いよいよ茶臼の周りから薄緑の抹茶が、
なんとも芳しい風味と共に現れるや否や、客一同歓喜の瞬間を迎えた。
その後、各人挽き立ての抹茶をご馳走になり、その風味たるや言葉では言い表せないほどの
感銘を受けた次第である。
その日の宴は、深夜にまで及び客一同、今宵の一座建立に別れを惜しみながらも
ご亭主のお心入りのおもてなしに深謝の念を抱きつつ帰路に着いた。
愚生もあらためてご亭主の演出の力量に敬服すると共に、
自己と他者の関係について深く洞察することができ、とても有意義な時間を過ごすことが出来た。
現代の我々を取り巻く環境はとても前述したような状況とは申し上げられない、
つまり自己と他者のバランスは不均等で自己主張や自己の利便性、得失を求めるがゆえに本来、
人間が身に着けるべき心性は間違った方向に進んでいるように思われる。
自然の摂理が導くように山水も孤立しては存在できないのと等しく、
人間も孤立しては生きていけない、今一度、自己と他者の関係を見直し、
人に対する思いやり、慈悲の心を尊して、それがいつの時代にも
人間の根幹をなすべきものであると信じて、
自分自身の心をコントロールできるように精進を重ね行きたい。
夢窓疎石
山水に得失なし、得失は人間にあり
投稿者 academy : 16:11