新入生 諸君! ◆ 嵐山熊彦 栗栖 基 ◆
この季節、世間一般に卒業式が執り行われ、
いよいよ社会人1年生が誕生する時季を迎えます。
我々の店もそれに漏れることなく、今年も料理人人生の
第一歩を踏み出す若者が入社してまいります。
日本料理に大志を抱く、彼らの夢や希望はとても純粋無垢なもので、
入社式の顔色からは明日への期待と不安が交差する心境を窺うことが出来ます。
当然のことながら、入社式では当社の創業理念や
新入生に対する激励の言葉がかけられ、各人の仕事に対する心構えや
社会人としての常識、良識について各社役員より訓示が述べられます。
そして明くる日より、各店舗にてプロの料理人としてのスタートを切り、
個々に一人前の料理人になるための人生を歩むことになります、
その間の修行は言葉では言い表せない、苦悩の日々の連続であり、
そのような過酷な修行期間を耐えてこそ、時として料理人だけが味わえる
至福のひと時を持つことが出来ます。
しかし人生、苦も楽も表裏一体で時には自分の描いた夢や
希望を見失うことも多々あり、職場での挫折感を味わい将来の社会的不安に悩み、
自分自身の進路が見えなくなる時季も必ず訪れてくるでしょう。
そんな時こそ、料理人として仕事に対する誇りを今一度、
見直し信念を持って新たなる難関に挑戦していただきたいのです。
新入生 諸君!
我々は現代社会において、「人は生まれながらに社会に貢献する義務があり、
各々個々に適正に応じた職種を選択し、その仕事を通じて世の中の役に立つことが
一つの人徳である。」と教えを受けてきました。
しかし仕事を通じて社会貢献をしていると実感できるまでには、
幾多の試練を乗り越え、その時代の社会環境の中で人間的にも成長し、
職業人としての技術や知識を取得しなければなりません。
そのためには自分自身の労力、精神力を費やし自己研鑽に努めることが肝要です。
それともう一つ大事なことは自分自身の仕事に誇りをもつことです。
店の規模など関係なく一人ひとりが自分の仕事を愛し、誇りを持つことです。
組織とは本来、一人ひとりが作り上げているものです。
国家も同じように人々の集合体なのです。
時として人は自己の誇りや自信を失うと、目先のことに振り回され
仕事に対する自分自身の信念が揺らいでまいります。
そしてついうっかり自己中心的な考えや行動をとり
社会人としての目的を見失しない末梢的なことにしか反応しなくなるものです。
そのような日々が長く続けば続くほど、人は人を信じられなくなり
社会に対して不平不満をぶつけるようになるのです。
このような空虚な心が蔓延すれば、自己の仕事に悪影響を及ぼすばかりか、
組織全体として本道を見失うことになりかねません。
今日のように日本人の心の病が叫ばれている時代にこそ、
永い歴史のなかで古来より受け継がれてきた、日本料理はとても崇高な食文化であり、
その食文化力の中に今の時代に必要な、人が人らしく生きていくための、
無限の救済力が秘められていると感じるのです。
そのような想いを一人でも多くの料理人と分かち合う機会が多ければ多いほど、
自己の中に料理人としての誇りや自信がより太く強固なものとして形成されていくと信じております。
さあ、これから料理人として仕事に就く新入生 諸君!
今の平和な時代に生まれ、自分たちの意志で選んだ仕事に敬意と尊厳の念を抱き続けながら、
日本料理の世界で思う存分、貴方たちの無限の可能性にチャレンジしてください。
投稿者 academy : 2008年03月23日 23:57