2008年01月30日

「東雲篩雪図と雪夜万家図」               杢兵衛 寺田慎太郎

先日、今年初の美術館鑑賞に行って参りました。
京都文化博物館で開催中の「川端康成と東山魁夷」展です。

とにかく私の目的は江戸後期の画家、浦上玉堂の代表作である「東雲篩雪図」です。
「とううんしせつず」と読みます。

入り口を入って正面奥にその絵は展示されていました。
この一角だけ絵の通り、どんよりとした雲に覆われた雪の積もる山中のように寒々しい感じがします。

やや左上がりで独特な隷書体で書かれた賛と落款は、決して上手な字とは言えませんが、
実に玉堂らしさが具わり絵とのバランスが絶妙です。

この字あっての「東雲篩雪図」なのかもしれません。

落款は「玉堂琴士酔作」と記されていますが、その通り玉堂は酒を飲んで酔っ払いながら
この絵を描いたと言われています。

しかし、絵の周辺までも凍りつかせる程の迫力のある絵ですので
やはり並みの人物では無かったんでしょうね。
しらふではここまでの絵を描けないのかな、という疑問も心の隅にあるのですが。

川端康成は以前からこの絵に傾倒していたそうで、
この絵が売りに出たと聞いてすぐにお金を借りて購入したそうです。
そして川端康成が購入してから重要文化財にそれから続いて国宝に認定されたそうです。

美術品に対する非常に厳しい目を持つ川端康成を唸らせた
この絵の作者である浦上玉堂とは如何なる人物だったのでしょうね。

「雪夜万家図(せつやばんかず)」とは与謝蕪村の代表的な作品ですが、
実はこの絵、今回の展覧会とは全く関係ないのです。

この展覧会のもう1人の主人公である東山魁夷の作品の中に
京都ホテルから眺めた風景を描いたものがありました。

雪景色なのですが、ホテルからの眺めですので
やや高い位置から町を見下ろすような視線で描かれており、
そこには重なり合う家の屋根が整然と並び、
筆を押し付けるようにして描いた雪が絵全体に描かれ、
ひっそりとした町を捉えています。

非常に綺麗な絵で、昔の京都の風景を想起させる
ほのぼのとした懐かしい風景なのでしょうが、
これに似た絵をどこかで見たことがある、と考えていたところ
思い出したのがまさしく蕪村の「雪夜万家図」です。

視線もそっくり、情景もそっくり、そして蕪村も京都を描いているのだとしたら、
もしかしたら東山魁夷も蕪村のこの絵を見たことがあるのでは?と考えたのです。

江戸期の京都、昭和初期の京都、全く異なる風景ですが
二つの絵から受ける印象は似ているな、なんてえらそうに思いました。

川端康成も東山魁夷も、また当然のことながら浦上玉堂も与謝蕪村も、
この世には既に存在しません。
ただこういった偉大な人物が残した足跡をこれからも大切にしたいなと
改めてこの展覧会を後にして思いました。

投稿者 academy : 2008年01月30日 23:44