2007年10月19日

野生の鴨                      山ばな平八茶屋 園部晋吾

昔、ある人の講演でこんな話を聞いた。

デンマークのジーランドにある湖に、毎年飛んでくる野生の鴨の集団いた。

あるとき、その湖にとても親切な老人が現れた。
その老人は、遠くから飛んできた鴨に、おいしい餌を与えた。
鴨たちは、その餌を喜んで食べた。

秋になっても、野生の鴨は南方に向かわず、そのままその湖に残った。
苦労して、餌を求めていかなくても、そこにはいつもおいしい餌があった。
毎日が、幸せで、楽しかった。

ところが、ある日、その餌をくれていた老人が、死んでしまった。
餌をもらえなくなった鴨は、慌てて次の湖に飛び立とうとしたが、
野生をなくし、醜く太った鴨たちは、もはや飛び上がることすら出来なかった。

春先の暖かい日は山の雪を溶かし、その濁流が一気に湖に流れ込んだとき、
野生を失った鴨たちは、すべてその濁流に飲み込まれてしまった。

安住、安楽を得た野生の鴨は、数千キロを飛翔する力を失い、
自然の変化に対応できなくなっていた。

かつての日本人は、敗戦から立ち直るために、
がむしゃらに働き、奇跡の経済成長を成し遂げた。

豊かさと平和を手に入れた次の世代の日本人は、
かつての日本人がしてきたことなど気にも留めず、
当たり前のように安住、安楽の中で過ごしている。

こういう私自身もその中にいる。飼いならされて、飛べなくなるより、
数千キロ飛翔する力を持ち続けたい。

毎日、こう戒めているのだが、これがなかなか難しい。

投稿者 academy : 2007年10月19日 23:54