端渓 ◆ 杢兵衛 寺田慎太郎 ◆
先日、夏のセールといってある書道具屋から葉書が一枚送られて来ました。
見ていると、筆や硯、墨など多くの物が安くなっているので、
丁度硯が欲しいと思っていたこともありお店の方に行って参りました。
早速ご主人に硯が欲しいことを述べますと、セール品の中でも一番大きいものを指差し
「これが一番のお奨め品」と教えてくれました。
頭に思い浮かべているものより大きかったので「少し大きいですね」と言いますと、
「大は小を兼ねます」と今これを買っておかないと後悔しますよ、
なんて口ぶりで言うもので少し悩んでいますと、
更に硯に付いた値段票を見て驚いたそぶりをしながら
「ほんまかいな?」“こんな安くつけてんのか?”といわんばかりです。
更に更に言葉は続き、
「この硯の素材は“端渓”で、中国の工場で我々の注文通りの形に形成させて・・・」。
「“端渓?”これは端渓ですか?」、
「そうです。端渓です」。
「では買いましょう。」
てなことで私は硯を購入しました。
余談ですが、ご主人のお奨めするところの古墨まで購入してしまいました
(古墨といっても昭和50年ものですが)。
上手く買わされた感もありましたが、良い買い物が出来たと満足して帰りました。
「端渓」とは中国広東省の中央部分に位置する広州市から
約100k離れた所にある肇慶市で取れる硯材を指します。
大河西江の周辺は硯材の宝庫のようですが、
中でも斧柯山と呼ばれる山の周辺で取れる硯材が端渓石だそうです。
硯材の採掘は非常に悪条件の元で行われるので、作業は困難を極めます。
何せ大河の横ですので水を掻き出す作業が必要ですし、
採石作業は現在でも昔と変わらずハンマーとのみで行われるそうです。
「老坑」と呼ばれる坑道は約32度の傾斜で下って行き、
「大西洞」と呼ばれる採掘場に辿り着きます。
これは清の乾隆年間(1736~95年)に開かれ、最も美しく優れた硯材が取れたそうです。
この大西洞は隣の西江の水面よりも約30メートルも下に位置するというから驚きです。
ここでは硯材は採り尽くされ為、現在大西洞の横の少し高い位置での採掘が行われているそうです。
以前このお店で所謂「古端渓」と呼ばれる古い端渓の講習会が行われて、
それに参加して以来古端渓に憧れていました。
とにかく古いものだけに困難入手の上、品物があっても非常に高額で売られています。
今私の経済力では現代のものを買うのが精一杯なので、
いずれ購入出来る日を夢見てこの手に入れた硯を大事にしていこうと思います。
投稿者 academy : 2007年08月30日 23:52