2007年06月26日

とある美術館                相伝京の味 なかむら 中村元計

先日、とある美術館へドライブをかねて行ってきました。
この美術館は田舎にあるどちらかと言えば、こじんまりした美術館です。
 
その道中休憩がてらにカフェに入りました。
このカフェは田舎の国道沿いにあり、周りは丘や山が広がり、
交通量はそこそこありますが、人はあまり歩いていないような道沿いにありました。
地元の人が入るカフェではなく遠方より来る人たちをターゲットにしたカフェのように思われました。

中に入るとまず地元の特産品などの土産物が並べられ、
その奥にセルフのドリンクのカウンターがありました。
そして右手前と左手前に硝子のショーケースに入った硝子のグラスや皿などが売られておりました。

その右奥には何故か服が展示販売されておりました。
その中にいくつか座ってコーヒーを飲むことのできる木のテーブルが
4つほどあちらこちらに置かれておりました。

このように書きますと何か凄くちぐはぐな店内を
イメージされるかと思いますが、しかし店全体は不思議とアンバランスな感じはせず、
かといって落ち着いている訳ではないのですが、違和感はなくゆっくりくつろげる不思議な空間でした。

そしてその中ではお年の頃なら60くらいのおばちゃんが一人で店の番をされておりました。
私たちはコーヒーを注文しました。

おばちゃん曰く「ポイントカードをお持ちですか?」

私「そんなもん持ってるわけないがな」と心の中で思いました。
しかしおばちゃんはとても親切にポイントカードを作ってくれました。

「○○個貯まったら1,0000円のサービス券を渡しますからね。又来てくださいね」

私(心の中)「そんなもん貯まるわけないし」

そうこうして、コーヒーをもらい、テーブルに座ってゆっくりくつろいでいたのですが、
そのテーブルがとてもアンティークな感じがして趣がありました。
椅子も洒落ていて一つ一つに違う彫り物がされています。
木肌を食い入るように全体を見ていたら、テーブルの足のところに紙が張ってありました。

「16世紀スペインのもの」と書いてありました。
「えらい、立派なものやなー、何でこのような田舎に・・」と感じました。

そして、もしやと思い他のテーブルを見ますと
皆同じように気の利いたデザインの洒落たものばかりで、
そのうちの一つは直径2メートル位の1枚の金属で出来た敷物がテーブルの上に敷かれており、
非常に細かい彫り物がされておりました。これもまた年代物のテーブルでした。

「これ何で出来ているのですか」もしやと思い尋ねました。
おばちゃん曰く「銀だそうですよ」
「えー?」なるほどまさかと思いましたが、やはりその類のもでした。

それがきっかけで、店のものをよく見回すと
先ほどショーケースに入っていたのは販売品ではなく展示品でした。
バーナードリーチ、バカラ、ボヘミア、ロイヤルコペンハーゲンの
今では売っていないアンティーク物ばかり。

「何や、凄いなー」と見入っておりました。「なんでこんなカフェに・・・」

そしてついでに服も見に行きました。
遠くから見ていた分には分りませんでしたが、
よく見るとこれらの服は色合いや,生地、デザインがなかなかよい。
それでいてものすごく安い。思わず物色して5着も買ってしまいました。
普通の半額くらいの安さでした。ここでも驚きました。

そしてその服をカウンターに行って買いました。
「はいさっきのポイントカードかしてね、判子押すからね。」
「アーラ、全部たまったわよ、じゃぁ1,0000円引くわね。」
「ほんまかいな」こんなところのポイントカードは二度と使うことはないと思っていたのに、
まさか満タンになるとは。思わずおかしくなり、そのおばちゃんと長々と話すことになりました。

よく聞くとここのオーナーは大阪に本社を持つスポーツウェアを主とした
男性ファッションメーカーの創業者だそうです。
故郷であるこの地で自身のコレクションを保存・公開することを目的に美術館を建設されたそうです。
ということで実はこのカフェの横がお目当ての美術館だったわけです。

館内は大小3つの展示室に分かれ、大展示室で常設展示として
バーナード・リーチの作品を主体に、企画展示は小展示室とドームで、
広重の浮世絵、棟方志功の版画など他の収蔵品をテーマに半年単位で行っているそうです。
海外赴任中はバーナード・リーチとも交友があったそうです。 
おばちゃんから入場券を買い入場することになりました。
「おばちゃん、入場券頂戴」と言って券を買いました。
おばちゃん「又、買ってくれるのね、ありがとね」
「今扉を開けるからね」と言って、おもむろに鍵を持ってきて、開けてくれました。

今回見たときはドーム内と小展示室は殆どピカソと棟方志功、
大展示室はバーナードリーチが主に展示されておりました。
特にピカソは晩年のものらしきものが多く展示されていました。

一通り見終えて、おばちゃんに挨拶に行きました。
「ありがとうございました、とても楽しかったです。」
「しかし、おばちゃん、無用心な美術館やな、
金塊ごと持っていくドロボーがいる時代に、こんな無用心な美術館知らんは。(笑)、
警備員の一人くらいいててもらわなあかんで」

おばちゃんはニコニコしながら「そやねー」
「喉かわいたやろう、お茶でも飲みよし」
「そやねーて、ホンマ物騒やで」てな会話をしていたら
そのカウンターの横におもむろに変わった絵がかけられていました。
「これは誰の絵?」おそらく無名な人であろうと推測する私の予想に反して
「あっ、それ、それねピカソらしいわよ」
「えー、ほんまですか?」

普通いわれのある骨董品や絵画などは奉るように大事に管理し、
一般客との距離も遠い中、こんなに無防備で親近感を抱いて
見せてくれたところは生まれて初めてでした。

おばちゃんの人柄もさることながら、非常に素晴らしい楽しい時間がもてました。
                                     
                                             感謝

投稿者 culin : 2007年06月26日 23:59