人と自然と5 ◆ 山ばな平八茶屋 園部晋吾 ◆
うちの庭を見直していきたい。
その前に、考えなくてはならないことがあった。
「何のために庭があるのだろう?」 代々続く庭師の方とお話しする機会を得たのは、
ちょうどそのときだった。
「庭と一言でいっても、お寺の庭、個人の家の庭、我々のような料理屋の庭など、
いろんな庭がありますが、それぞれに違いはあるのでしょうか?」
普段から思っていた疑問をまず口にした。
漠然とした私の質問に、その方はゆっくりと答えてくださった。
「京都は千年もの間、都があった。公家や武家、寺や神社、町衆や行商人など
いろんな人が集まってきた。いろんな人が集まると、おのずとそれぞれの好みや用途が生じてくる。
いろんな庭が出来たのも、まさに道理。庭にはそれぞれ目的があり、その目的がわかれば、
庭が何のためにあるのかがわかる。 料理屋さんの庭の目的は?」
「庭の目的? つまり・・・、料理屋は、お客様がハレの日にご馳走を食べに来られる特別な場所です。
そこは、非日常的な空間でなくてはならない。料理だけでなく、部屋のしつらえ、仲居の所作、
風情を醸し出す庭というのも大事な要素です。」
「お客様に料理を食べながら、風情を味わってもらうというのが、料理屋さんの庭。
それが、料理屋さんの庭の目的やね。」
「ただ、うちの庭は長年受け継いでいるので、木が大きくなりすぎて、雑然としていて気に入りません。
これから見直していきたいのですが、どこまで木を剪定していったらいいのかが、わからないのです。」
「木をどこまで剪定するかは、その庭の目的次第。庭はもともと目的があって作られていて、
それに応じて植木が配置されている。植木にも、主木、脇の木、根締め(根元に植える草木)と
それぞれの役割がある。それぞれがうまく調和して庭が出来ている。
だからまず、その木がどんな木として植えられたかを見極めることが必要やね。」
「うちの庭が造られたのは、おそらく昭和初期、洪水で座敷がすべて流されたあとに
造られたものだと思うのですが、それ以来、部分的に修復してつぎはぎの状態になっていますので、
もとの庭がどういう意図で作られたのか今ではわからないのです。」
「わからなくなってしまっているかもしないが、作ったときには思いがあったはず。
それを発見することや。」
先祖はいったい何を思ってこの庭を造ったのか?
考えてみても、さっぱりわからなかった。
その様子を見て、その庭師の方は、静かにうちの先祖の思いを語り始めた。
投稿者 culin : 2007年04月19日 23:29