2007年04月19日

人と自然と5                    山ばな平八茶屋 園部晋吾

%E4%BA%BA%E3%81%A8%E8%87%AA%E7%84%B6%E3%81%A8%EF%BC%95.jpg


うちの庭を見直していきたい。
その前に、考えなくてはならないことがあった。

「何のために庭があるのだろう?」 代々続く庭師の方とお話しする機会を得たのは、
ちょうどそのときだった。

「庭と一言でいっても、お寺の庭、個人の家の庭、我々のような料理屋の庭など、
いろんな庭がありますが、それぞれに違いはあるのでしょうか?」
普段から思っていた疑問をまず口にした。
漠然とした私の質問に、その方はゆっくりと答えてくださった。
「京都は千年もの間、都があった。公家や武家、寺や神社、町衆や行商人など
いろんな人が集まってきた。いろんな人が集まると、おのずとそれぞれの好みや用途が生じてくる。
いろんな庭が出来たのも、まさに道理。庭にはそれぞれ目的があり、その目的がわかれば、
庭が何のためにあるのかがわかる。 料理屋さんの庭の目的は?」

「庭の目的? つまり・・・、料理屋は、お客様がハレの日にご馳走を食べに来られる特別な場所です。
そこは、非日常的な空間でなくてはならない。料理だけでなく、部屋のしつらえ、仲居の所作、
風情を醸し出す庭というのも大事な要素です。」

「お客様に料理を食べながら、風情を味わってもらうというのが、料理屋さんの庭。
それが、料理屋さんの庭の目的やね。」

「ただ、うちの庭は長年受け継いでいるので、木が大きくなりすぎて、雑然としていて気に入りません。
これから見直していきたいのですが、どこまで木を剪定していったらいいのかが、わからないのです。」

「木をどこまで剪定するかは、その庭の目的次第。庭はもともと目的があって作られていて、
それに応じて植木が配置されている。植木にも、主木、脇の木、根締め(根元に植える草木)と
それぞれの役割がある。それぞれがうまく調和して庭が出来ている。
だからまず、その木がどんな木として植えられたかを見極めることが必要やね。」

「うちの庭が造られたのは、おそらく昭和初期、洪水で座敷がすべて流されたあとに
造られたものだと思うのですが、それ以来、部分的に修復してつぎはぎの状態になっていますので、
もとの庭がどういう意図で作られたのか今ではわからないのです。」

「わからなくなってしまっているかもしないが、作ったときには思いがあったはず。
それを発見することや。」

先祖はいったい何を思ってこの庭を造ったのか?
考えてみても、さっぱりわからなかった。
その様子を見て、その庭師の方は、静かにうちの先祖の思いを語り始めた。

投稿者 culin : 2007年04月19日 23:29