4月で思うこと ◆ 萬重 田村 圭吾 ◆
短い冬が終わり、2月には早、春が来たような気候かと思うと、
また冬がやってきたような寒さですが、「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので
これから春らしくなっていくでしょうし、「三寒四温」の言葉通りなっていくことを願いたいものです。
どうも料理をしていてこれだけ気候がおかしいとピンと来ないですよね。
他の会員の皆さんはどうですか?
ただ料理屋と言うのは季節や食材だけで季節を感じるわけでは有りません。
絵画や調度品などその時期に出すことによって季節を感じます。
もちろん器もそうです。
私の店には私自身がその器が出てくると
自分自身の背筋がシャンとし初心にかえることのできる器が有ります。
その器は「桜型の小鉢」なのですが、五枚花弁を立体的に表現した、
ピンクと白で春らしいかわいい小鉢なんです。
これが出てくると「ぼちぼち桜が咲くな!!」という気持ちと
先ほど言った初心に帰ることが出来ます。
と言うのはこの器は私が修行に行かせていただいた料理屋さんにも同じものがあり
(修行先のご主人と父が協同で購入したようです。)、3月に入店させて頂いて、
初めての献立代えの際、先輩について、店の屋根裏部屋の食器倉庫から
この器を出した時に、「なんて素敵な器なんだろう。」と感じた思いと、
4月になりお料理に使われた際、見習いは器の洗いものをしなくてはなりませんので、
当然その器を洗いましたが、ある日、洗い物をしていて誤って
この桜の小鉢が手から転げ落ちた瞬間、
店のご主人からカミナリを落とされた苦い思いでもある器です。
ですのでこの器を見るたびに自分の気持ちがその当時に戻り、
春になると初心に戻ることが出来ます。
大変厳しい方でしたが、料理にかける思いと情熱は
その後のご主人の生き様から学ばせて頂いたことは多分に有ります。
そのご主人も3年前、長い闘病の末、お亡くなりになりました。
今も「あほーっ。」と言われゲンコツを頂いた日々が懐かしく思い出されます。
亡くなる10日ほど前に病院にお見舞いに行った際、
お声が発することの出来ないのに、
目談(言葉を発することが出来ない人が五十音表を目で示して会話をする方法)で
一言、「がんばれよ。」といって頂いたご主人の眼光の鋭さが、
今もその器を通して自分に語りかけてくるようです。
今年も当店に新人が入店してきました。
初の平成生まれがやってきました。
この子たちはこれからこの店で何を感じ、
どんな体験をしていくかはわかりませんが、
いつまでも初心を忘れずにいて欲しいと思います。
自分にもそう言い聞かせています・・・・・。また桜の季節がやってきます。
投稿者 culin : 2007年03月24日 20:25