人と自然と3 ◆ 山ばな平八茶屋 園部晋吾 ◆
父親から「頼んでおいたし、行って来い。」と、大学を卒業してすぐ修行に出された。
そこは、大阪の北浜にある名料亭。
大きなビルの中に、その料亭はあった。
ガラス越しに土佐堀川が見えていた。
その向こうに中之島公園があるものの、緑はそれだけで、あとはビルビルビル。
そこに庭はなかった。 坊主(1年目の呼び名、追いまわしとも言う)の最初の仕事というのは、
どこもお決まりで、洗い物、鍋磨き、洗濯、買い物など、上の人に言われるままに走り回る。
18人も先輩がいると、ひと言ずつ言われても18の仕事。それで1日が終わる。
現場の仕事は、何とかこなせた。
大変だったのは、料理に使う敷き葉取り。
「そろそろ桜の新芽が出てるやろ、小さめのところ100枚ほど取って来い。」と
帰る間際に先輩からひと言。
「仕事終わってるやん。今から?どこにあるの?」
湧き上がってくるのは、疑問ばかり。
「河原にあるやろ」
「おい、それと、枝から折るな、葉っぱだけ取って来いよ、見つかったら怒られるで。」
ご忠告ありがとう。
自転車にまたがって河原に向かった。
1枚、また1枚葉っぱを取っている内に、「いったい自分は何をしているのだろう?」
妙に虚しくなった。
「はい、取ってきました。」と、差し出した葉っぱを見て、
「これきれいに洗ろて拭いたか?」
「いえ。」
「あほか、きちっと洗ろて揃えて出して来い。」
そのあとは、大き過ぎるだの、小さ過ぎるだの、虫が食ってるだの言いたい放題。
これが修行かと思いながらも「じゃあ、あんたが取って来いよ!」
何度その言葉が出かかったことか・・・。
あれやこれや言われることに、無性に腹が立つ。
だから、言われる前に、使えそうなものをすべて揃えた。
今の時期にどんな葉っぱがあるのか?
敷き葉として使えるのはどんな葉っぱか?
大きさはどうか? 色は? 形は?
自然と、料理の一部として葉っぱを捉えはじめていた。
投稿者 culin : 2007年02月19日 21:22