材木と箸 ◆ 懐石・宿 近又 鵜飼治二 ◆
我々の食生活に欠かせない『木材と箸』についてのコラムを書かせてもらいます。
日本書紀の神代の部、樹種に、
〔すさのうのみこと〕が言うに『韓(から)の国には金銀がある。
それを得るために、わが御子の治める国に船がなかったら良くない』
そのために〔すさのうのみこと〕が次々と髭をぬきとったところ「杉の木」となり、
胸毛を抜き取ったところ「桧」となり、尻の毛は「槇」の木、眉の毛は「樟」の木となった。
さらにその用途を定め、揚言して言うには『杉の木と樟の木は船に作るのがよい。
桧は立派な御殿を作る用材にする。槇はこの世に生きとして生きる者の墓の柩に用いるがよい。
食用となる数々の種は、よく蒔いて育てなさい。』このように言ったと記されています。
わが国の木材の需要のほとんどが輸入に依存しているほど、
材木が不足している現在なら〔すさのうのみこと〕は
毛を抜いても抜いても追いつかず完全に無毛症になっていることでしょう。
なお、〔すさのうのみこと〕の御子、〔いとたけるの神〕が初め天降った時に
沢山の樹の種を持って降った。
しかしこれを韓の国には蒔かずにことごとくわが国に持ってきた。
そして妹の〔おほやずひめのみこと〕と〔つまつひめのみこと〕と共に
筑紫を始めとして大八洲(おおやしま)の八つの島のいたるところに蒔き、
どの山も青々とした山に変えた。
それゆえこの三神を称えて手柄のある神とし紀伊の国に祭ってある、と記されています。
しかし、わが国には戦争中に乱伐されたこともあり、大木はほとんど皆無の状態です。
さて、そのほか箸を地面に差しておいたら、だんだん大木になったという話が全国的に
伝説として方々で語り継がれています。
東京墨田区 吾妻神社 日本武尊〔やまとたけるのみこ〕
埼玉県北足立郡 土呂の神明社 源義経
山梨県山梨郡 小屋舗村 日本武尊
山梨郡等々力村 万福寺 親鸞聖人
新潟県北蒲原郡分田村 都姿の松 親鸞聖人
滋賀県犬上郡 百済寺 聖徳太子
滋賀県海部郡芝村 不動の神杉 弘法大師
このように土に差した箸がみるみる成長する話が全国的に広く語り継がれているのは、
その人の偉大さを讃える作り話でしょうが、できることなら内地産の木材の深刻な
不足解消のため〔聖徳太子〕や、〔日本武尊〕などの皆さんにお帰り願って
ジャンジャン御箸を差していただきたいものです。
投稿者 culin : 2006年12月11日 22:22