祇園の旅館にて ◆ 杢兵衛 寺田慎太郎 ◆
フェローシップ事業でフランス人シェフ達を
関空に迎えに行った日から早くも1ヶ月が経ちます。
1ヶ月経った今でも「良い経験をさせて貰った」とその時の余韻に浸っている私ですが、
今回はパスカル・バルボ氏、クリストフ・ロア氏、ブラス夫妻の4人が
宿泊していた祇園の小さな旅館でのお話をしようと思います。
恥ずかしながら私は長年祇園におりますが、全くこの旅館を知りませんでした。
フランス人達が来日する前に下見に行きましたが、
最初どこにあるか分からなかったぐらいこじんまりした旅館です。
彼らはこの旅館に到着し部屋に案内された時、少し戸惑っているようでした。
1人パスカルだけは全く平気そうで、テンションは相変わらず高かったのですが。
様子を伺っているとみんな日に日にこの異空間に慣れていっているようで、
最終日には別れを惜しんでいました。
また、ここの女将さんが非常に気さくな方で
常に笑顔を絶やさずに一生懸命フランス人達に接しておられたので、
彼らはすごく感謝していたようです。
毎朝私が旅館まで迎えに行くと既に女将さんが彼らを起こしていてくれていたのですが、
最初に用意して出てくるのはセバスチャンでした。
彼は静かに2階の部屋から下りてきて靴を履き、
外で1人みんなを待っていました。
次にクリストフかヴェロニクでしょうか。
クリストフはいつも女将さんがいれてくれるインスタントコーヒーを飲んでいたようですが、
きっとフランスではいつも朝のひと時にコーヒーを飲む大事な時間があるんでしょうね。
こんなに慌しくないでしょうが。
そして最後にいつもパスカルが息を切って階段から下りて来て
元気に日本語で「おはようございます!」と言って握手を求めてきました。
こんな朝の僅かな時間の中でも彼らの人間性や習慣が垣間見ることが出来て楽しかったです。
彼らがフランスに帰った後女将さんに挨拶に言った時にこんなエピソードを聞きました。
恐らく茶花研修の日ですので11月1日の夜のことだと思いますが、
フランス人達がその日の日程を終えて帰って来た時に、
女将さんがいつものように玄関まで出て来られたのですが、
4人とも顔を見合わせながら何か後ろでモゾモゾして部屋に上がろうとしません。
おかしく思った女将さんが暫くその様子を見ていると
クリストフがどこかで買ってきた花器を取り出し、
またヴェロニクがそれに生ける為の花を取り出し、
その日に学んだことを思い出しながら(?)花を生けて女将さんにプレゼントしたそうです。
何とも粋な計らいではありませんか。
嬉しそうに語る女将さんを見ていて私も嬉しくなりました。
確か花器には紅葉が描かれていたので、
今も玄関先にはこの花器に花が生けられて飾られているのかもしれませんね。
女将さんの献身的なおもてなし、私も勉強になりました。
*写真は茶花研修の風景です。
投稿者 culin : 2006年11月30日 20:23