おもてなし ◆ 山ばな平八茶屋 園部晋吾 ◆
「おもてなし」と言っても、なかなか一言で言い表すのは難しく、
近くの小学校から、3年生に「おもてなし」について教えて欲しいと依頼があったのですが、
どうしたら、簡単に理解してもらえるのかなと考えた末、こんなことをしてみました。
やはり、学校の教室で話すより、店に来てもらったほうがいいと思い
授業時間に店に来てもらうことにしました。
広間の2階に席を作ろうと電気をつけ、冷房を入れ、座布団を並べ、
雪見障子を開け、子どもたちが来るのを待っていました。
そうこうしている内に先生に連れられ、
わいわい話しながら子どもたちが店にやってきました。
私が出迎えて広間の1階に案内しました。
そこは、これから掃除をすべくテーブルが重ねられ、
座布団は山積み、もちろん、電気や冷房はついていません。
雪見障子も閉まったままの薄暗い部屋に子どもたちを案内し、座ってもらいました。
さ、話し出そうとしたときに、「あ、間違えた。」と言って、
もう一度、子どもたちに立ってもらって、2階の広間に案内しました。
涼しく明るいその部屋で、きれいに並べた座布団に座ってもらい、少しずつ話を始めました。
「おもてなしってどんなことですか?」という私の質問に、
「家にきた人にお茶を出す。」「ご飯を作る。」とか、
何人かの子どもは答えてくれましたが、
あとは首をかしげ、言葉とイメージはわかっているけど
うまく説明できないといった感じでした。
「じゃあ、暑い日に、自分は涼しい冷房の部屋にいました。
お客さんが来るということで準備をしようと思うのですが、
少し冷房にあたり過ぎて寒かったので冷房を切り、
お客さんが来た時に、体も冷えていたので熱いお茶を飲みたくて、
熱いお茶を出したら、これはおもてなしですか?」と。
みんな、首を横に振り、「違う」と答えました。
「そう、これは、おもてなしではないですね。」
自分の都合だけで自分のしたいことをすることは、おもてなしではありません。
来る人のことを考えて、「暑いだろうし、冷房を入れておこう」
「喉が乾いているだろうし、冷たいお茶を用意しよう」というのが、「おもてなし」です。
これをしなければならないという決まりは何もないですが、
相手のことをよく考えて、自分ができる最大限の事をすること。それが「おもてなし」です。
「最初、皆さんを案内した1階の座敷に座ってどう思いましたか?」という質問に、
「嫌な気がした」とはっきり答えてくれました。
「あの座敷は皆さんのことを何も考えずに、
私の都合だけで、そのままのほうが楽だからと何もしなかった座敷です。
2階の座敷は、皆さんのことを考えて準備しました。
おもてなしってどんなことなのか何となくわかりましたか?」
「わかった!」と、みんな一斉に答えてくれました。
帰りに靴を履くとき、仲居さんがきれいに揃えておいてくれた靴を見て、
少しでも何かを感じてくれたらなという思いで
その子どもたちを見つめ、見送りました。
私の姿が見えなくなる少し前、もう一度お辞儀をして曲がっていく
何人かの子どもたちの姿に、何だか暖かいものを感じました。
投稿者 culin : 2006年09月19日 15:07