夏は朝茶 ◆ 右源太・鳥居宏行 ◆
暑い日が続きますね。何を書こうか迷ったのですが、
先日、茶の師匠にお招き頂いた「朝茶(あさちゃ)」の事について書くことにします。
京都の夏は無茶苦茶暑いので、この時期には暑さを避けて
早朝の涼しい内に朝茶が催されます。
6時からの朝茶に備えて4時半に起きて、着物を着て5時過ぎに家を出ます。
師匠宅は鷹ヶ峰の山手にあって、早朝は特に爽やかです。
玄関先にはたっぷりと水が打たれています。
手がかりを開けると寄り付きの畳の上には籐むしろが敷いてあります。
障子は殆どが葭戸(よしど)に替えてあり、涼しげな夏仕様になっています。
建具を替えてむしろを敷くだけで、座敷の雰囲気は一変します。
昔の人の知恵は本当に素晴らしいですね。
蹲(つくばい)で手と口を清めて、茶室に入ります。
こちらの建具も葭戸に替えてあり、普段は見えない庭の緑が葭戸越しに美しく映えます。
照明が暗めに調節されているため、葭戸越しの庭の景色はまるで日本画を見るようです。
師匠の演出センスの良さには今更ながら驚きます。
客は10名で、全員が師匠の弟子です。
正客(しょうきゃく)は地方で茶道の先生をされている方。お詰めは料亭の主人です。
私はいつもの様に、末席の方に座らせていただきます。
師匠自ら座布団をお運び頂いたので、敷かせてもらいます。
師匠に座布団を運ばせるなんて、この世界だけの事でしょうね。
本当に恐縮します。
何年たっても正座は苦手なので、これで足の痛みを忘れて懐石を味わう事ができます。
御膳も師匠自らお運び頂き、座ったまま一歩前に出て受け取ります。
最初に、絶妙な蒸れ加減のご飯を一口頂きます。
美味い!そして、朝から飲む、キリリと冷えたお酒は最高!
献立について詳しく書くスペースが無いのが残念ですが、
師匠の料理は一言で言えば原価無制限直球勝負の懐石です。
なので、どんな料理屋も勝てません。勝負したら、料理屋は潰れてしまいます。
懐石を頂いたら席を改めて、いよいよ濃茶をいただきます。
濃茶を点てられる師匠の姿は、老いてますます侘び茶人を極めておられるように見えます。
師匠のお茶を頂く事は、弟子にとってはこの上ない喜びです。
約4時間の朝茶を終えて、余韻を味わいつつ玄関を出るともう日は高くなっていました。
ところで、なんで夏に夜咄(よばなし)の茶事をしないのか、不思議ではありましたが師匠によると、
露地で明かりをつけたら虫が大集合してきて、大変な事になったそうです。
やはり、「夏は朝茶」なのです。
※写真は右源太の茶室です。
1.夏仕様の葭戸に替えました。
2.夏の飾り。熱源となってしまう風炉釜は熱が外に漏れにくい形になっています。
投稿者 culin : 2006年08月06日 18:21