2006年07月31日

涼感と温もりと                        村田吉弘@菊乃井

日本料理は季節感を大切にするとよくいうが、日本に限らず四季をめぐっている国で
季節感を自分たちの食べ物に反映させないような民族はいない
と思う。

ただ日本料理の場合は自然を愛でるだけでなく、
そこに空気の流れを必須とする点で異色と言えるだろう。
たとえば季節によっての極めつけの仕上げの色使いがある。
色づけというより香り付けに近いかもしれない。

晩秋から冬にかけての日本料理といえば柚子の黄色に尽きる。
夏は青柚子の香りと青柚子の色、春は柔らかい緑色をした木の芽の色ということになる。
青味と香りが共通で、しかも香りは空気がないと香らない。
空気の存在こそがものを生き生きとさせるのである。
空気の流れが料理をも躍動させる。
いくらきれいでも空気の流れのない絵のような料理は
作ってもしようがないとすら思うのだ。

日本料理、とくに京料理は最後はやはり香りと青味だと思う。
青味は料理全体を引き締めて食欲を刺激すると同時に、清涼感につながる
一方、香りが加わることによって食欲がわく。

なぜ青味なのかと考えた時期がある。
日本人は緑をも含めて青という。

日本人にとって青は最も基本的なベースの色だったのではないか
青の色に対して日本人は特に敏感で、
そのわずかな濃淡によって季節を感じることができる。

それはどこから来ているかと考えると、ひとつは木々の重なり、
緑の重なりを一色と見ていないところにあるのではないかと思うのだ。
それを料理で言うと、無地に見える重ねの色ということになる。
そこからものの深みが出てくるのだ。いわば素なる玄とでもいおうか。
重ね色にすると温かそうな水色や、涼しそうな赤などができるのも不思議である。

水の色に近いものが涼しそうに見えるとか、
火の色に近いものが暖かく見えると一般にいわれるが、
赤が熱いかといわれると、僕は涼しい赤も見たことがあるし、
熱い青も見たことがあると言うしかない。

火色が入った焼き締めの信楽の皿は水に濡らすとこれほど涼しそうなものはなく、
そこに青い葉でも敷かれているといっそう涼を感じるものである。
とはいえ味に劣らず、色もきわめて変容性に富む。
そういう意味では、同じ色でも受け手によって違って感得されることが大いにあり得るのである。

料理は作って半分食べ手側が半分だと思う。
作る側としては何色に見てほしいと思うだけで、
それを何色に見るかは受け手の力だと思う。
料理を楽しもう、暑いから涼を楽しもうという気持ち
その料理を涼しい料理にするのだとも言える。

涼を求める心が涼を呼び、温もりを求める心が温もりをもたらすのだと言えようか。

投稿者 culin : 2006年07月31日 09:20